狭山茶摘み体験フェスタに参加して考えたこと
夏も近づく八十八夜🎵(5月2日)から1か月近くがたち、狭山茶の新茶もお店に出そろった感がある。気が付くともういくつか寝ると梅雨入りの時季。 梅雨入り前の貴重な紺碧の空に誘われて、狭山茶の一大生産地の入間市にある埼玉県茶業研究所で開催された「狭山茶摘み体験フェスタ」に参加した。
このフェスタは、埼玉県茶業協会や埼玉県茶業青年団などと連携し、狭山茶の消費拡大に向けた各種のPR活動として毎年6月上旬に開催しており、埼玉県内各地や都内から多くの方が来場している。
2024年6月1日(土) 快晴
AM8:00出発ーAM9:15 JR金子駅―(徒歩25分)ーAM9:45 埼玉県茶業研究所-AM10:20 新茶の入れ方教室(15分)ー11:30 抹茶の入れ方教室(30分)ー12:30茶摘み体験(15分)ー13:30JR金子駅ー15:00帰宅
午前10時から開始のイベントなので、早起きは3文の得とばかりに前乗りするため、我が家を朝8時に出発。
まだ朝早いせいか、イベント会場まで駅から20分以上かかるせいか、人はまばら。コンビニエンスストアがないと事前に想定して、事前にお弁当と和菓子を購入しておいたのは大正解。まずは、日頃からビジネスで養った危機管理力を発揮できた。
今までの人生で初めて降りた駅なので、現地まで無事にたどり着けるか不安だったが、ところどころにある標識や現地の方に尋ねながら歩いた。
住宅街に入り公民館を過ぎると、目の前に広大な茶畑が出現。それがこれだ!
茶葉の新芽(一番茶の葉)は刈り取られていたが、濃緑の茶葉が紺碧の空と絶妙なコラボレーションで、都心と違いビルなど遮るものがなく加治丘陵と茶畑を見渡すことができ一面のお花畑にいるような夢心地で、日頃の疲れもどこえやら、心身ともに癒された。
茶畑の間を縫ったゆるやかな段丘の道を進むと、地元の農家の方が茶摘みをしている光景に出会った。昔と違い茶娘の格好はしていなかったが、文明の利器(機械)を駆使して、効率的に作業をしていた。一面緑の景色を眺めながら歩を進めると、前を歩いている方は、老夫婦のみだった。そのあとをついてしばらくすると現地に到着。
予想通り会場はすでに満車に近く親子連れが大半だった。
早速会場内に入ると、すでに茶摘み体験が行われていた。原則、事前予約制だったが、当日予約もOKだったので、正午頃の回に参加することにした。
受付近くにインスタ映えスポットを設定してあり、今後、行列になることが想定されるので、数人待ってスタッフの方に記念写真を撮っていただいた。
本会場に向けて進む途中、スタッフの方が呼び込みいており興味津々でついていくと、新茶葉のてんぷらの実演試食をおこなっていた。揚げたてを用意していたが、茶摘み体験でお客が少なかったようで、揚げたての天ぷら(お茶の葉と紅茶(茶葉を蒸して乾燥を繰り返し発酵させ、茶色に変色するまで天日干ししたもの)の2種をお好みに合わせて塩をつけていただいた。スタッフの方から茶摘み体験で茶葉を摘み取って持ち帰ることができると聞いて、摘んだ新茶の葉を使って美味を家庭でも味えると思うと茶摘み体験へのモチベーションがさらに向上した。
おなかも満たされ、メイン会場に行くと新茶の販売を中心に出店していた。色々な品種のお茶を新させていただき、さやまかおり、ふくみどり(それぞれ50gで600円を2袋ずつ)を購入。
地元の茶業協会の販売員の方の説明では、さやまかおりは、やや早生で、埼玉県内では最も早く収穫される。寒さに強く、収量も多く栽培が簡単で全国で5番目に多い品種で、濃厚な色と味が特徴。
ふくみどりは、中生で、寒さに強く、収量も多い。ふくよかな香りとまろやかな味が特徴で、高級茶向きの上品なお茶だそうだ。
我が家で飲み比べてそれぞれの味わいがわかるかな?
会場の建物内では、新茶のいれ方と抹茶の入れ方教室の受付が始まり、一番乗りに近かったので午前中の予約が取れた。(人気があるため、午前中の枠はあっという間に埋まり満員御礼となった)
新茶の入れ方教室では、インストラクターの資格を取った新人(今回がプレゼンデビュー)の方の説明を聞きながら、全国的に有名な品種のやぶきたを試飲した。品種やお湯の温度の違いや、1番茶、2番茶でも味わいが入れ方次第でかわることなど、比較して試飲体験させていただいた。
近年では、時短(タイムパフォーマンス)が重視されて、急須で入れてお茶を味わう機会が急速に減少しているが、コーヒー同様、入れ方次第で味が変わる楽しさは捨てがたい。
休日など時間に多少余裕があるときなどは、茶道の奥義を垣間見るのも悪くはないと実感した。
その後、館内の展示(お茶の品種の違いやこの研究所で行われている事業紹介のDVDなどを視聴)に見入っていたら、あっという間に次の抹茶の入れ方教室の時間となった。
こちらも、新茶の入れ方教室同様、インストラクターの方から狭山茶の明松の紹介と抹茶の立て方の説明を受けた。その後、実際に、茶こしをして、粉末になった抹茶をお椀にいれ、抹茶1.5g~2g お湯は60cc~70ccが標準で、お湯は一度沸騰するまで沸かして、90℃程で注ぐと綺麗に泡立つそうだが、お湯の温度や粉末の量を調節して好みの味にするのもお茶を点てるひとの腕。粉末を多くすると泡立ちがよくクリーミーな仕上がりとなるそうだ。お湯を注いだら茶筅を使用して、底にたまった粉末をゆっくりかきまぜた後、最初はお茶碗の側面についた抹茶を落としゆっくり茶筅を振る。抹茶の粉が全てお湯に触れたら、手首のスナップを効かせて高速回転で茶筅を前後に振り、泡立てていく。素人は肩や肘が動いてしまい、うまく泡立たないのはご愛嬌。
充分泡立ったら速度を落として大きい泡をつぶすように表面をゆっくり丁寧になぞり終了。このお茶を点てる動作は慣れるまで難しく、力が入ると腱鞘炎になってしまうので要注意。
茶道(茶の湯)が大成されたのは戦国時代の千利休のころで、彼の茶訓といわれる「茶は服のよきように点て」の趣旨は、抹茶の点て方(水やお湯の温度、粉末の質量などの調整含む)で味わいが変わるので、客人が飲みやすいお茶を点てなさいという意味なのだろう。また、剣道、柔道、弓道などとともに、「~道」が付くものは、礼儀作法に始まり自らの精神(心)を鍛え整えることもできる。
また、抹茶を点てるには、抽出時間を待つ必要がなく茶殻も出ず家庭で手軽に楽しめるので、今月我が家にホームビジットに来る留学生に抹茶のお点前を体験してもらうことに決めた。まずは茶筅と抹茶をそろえて、自ら教わったことを復習して、自分好みのお茶を点てられるように訓練!
物心ついた時から狭山茶のお世話になり、小学校の時には、狭山茶でうがいをしていたような記憶があるほど、狭山茶なくして成長なしといっても過言ではない人生を歩んできた。
そんな私も、社会人になって地元から独立し、都心近郊で生活するようになってからは、いつの間にかコーヒー党に様変わりしたが、実家に帰省する度に茶畑の風景や狭山茶の濃厚な味わいと香りの良さを後世に残したいと再認識する。
茶摘み体験フェスタに参加して、普段何気なくに味わっていたお茶の知識が深まり、狭山茶への愛着がより一層増した1日となった。
(参考)
★埼玉県茶業研究所
埼玉県入間市上谷ヶ貫にある埼玉県の試験研究機関。
埼玉県の気候に適した茶の品種の育成、茶園管理技術や製茶技術の開発等のな研究を通じて埼玉の特産物である狭山茶の振興を図っている。
★ 入間市博物館 ALIT
狭山茶について知識を深めたい方にお勧めの博物館
★狭山茶とは
埼玉県内産及び埼玉県に隣接する東京都西部地域産の荒茶を100%使用した狭山丘陵一体で生産されるお茶の総称。 同原料の荒茶を50%以上100%未満使用したものは「狭山茶ブレンド」。 どちらも埼玉県内及び埼玉県に隣接する東京都の西武地域で最終的に仕上げ製造したいるもの。 (平成16年埼玉県茶業協会制定「狭山茶の表示に関する基準」より)入間市が生産量が最も多く、地元では「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」といわれ、仕上げの工程で行われる「狭山火入れ(さやまびいれ)」による独特の香ばしさや、厳しい気象条件のもとで育つ肉厚の葉を用いることによる、甘く濃厚で深みのある濃い味わいが特徴。
★狭山茶の歴史
「狭山茶」の起源は中世の文献に登場する「河越茶」や「慈光茶」など、当時の武蔵国内の有力寺院で生産されたとされる茶から始まり、室町時代には、京都や奈良の茶園に次ぐ地方茶産地として大和・伊賀・伊勢・駿河などと並ぶ銘園の一つに数えられている。
その後戦国時代の余波をうけて一時は停滞したが、江戸時代に「蒸し製煎茶」の製法を関東で初めて導入して復興し、江戸で取り引きされるや狭山茶は他産地にも増して繁栄し、横浜開港と同時にいち早く輸出された。
明治十八年には川越が生んだ我国茶業の先覚者高林謙三翁が製茶機械を発明し、世に広めた。大正時代に至り機械製茶は急激に普及され始め、我国茶業に一大変革をもたらし、現在は、埼玉県を代表する特産品となっており、毎年開催されている全国茶品評会及び関東ブロック茶の共進会等において常に上位入賞を果たしている。
★埼玉県で栽培されている茶の品種
★抹茶とは
茶葉ではなく粉末状になっているのが大きな特徴で、旨みが強く柔らかな新芽に生育させるために茶畑を布などで覆い日差しを遮って栽培された碾茶(てんちゃ)という種類のお茶の茶葉を臼などで挽き、粉にしたもの。
「薄茶(うすちゃ)」と「濃茶(こいちゃ)」の2種類があり、薄茶は、少量の抹茶と湯で点てるお茶で、多くの甘味処や日本茶カフェなどで提供されており、「濃茶」と比べて香味が淡白。
濃茶は、茶道部やお茶会などで提供されることが多い。抹茶を「薄茶」より多めに使い、少ない量のお湯で練るために出来上がりは濃厚で粘性があり、強い旨味と香りが特長。