先日、我が職場の庁舎で、人権・平和展が開催されていた。
時々、学校の取組みや環境、ごみ、食品衛生など地域住民への啓発や紹介などが展示されいる。、一応、端くれの公務員としてわが町ではどんなことをしているのか知るいい機会でもあるので、昼休みなどに見学したりする。
昼休みにさらっと目を流しながら見ていたら、目に入ってきたのが杉原千畝氏の写真だった。
何を隠そう、今を遡ること10数年前、外交官試験の勉強をしている時に知った(出会った)、私が尊敬する人の1人だった。
最近では、6000人命のビザなど、幸子夫人が書かれた著書も出版された。彼がリトアニアの日本領事代理のとき、ナチスの迫害から逃れるユダヤ人たちに日本の通過ビザを発行して、シベリア鉄道でウラジオストックから船で熟賀港へ行き、最終的にはアメリカなどからオランダキュアラソー島への亡命の手助けをした。
日本とドイツは同盟関係で、日本政府の命令に背いて日本通過ビザをドイツが差別するユダヤ人に発行することは許されない状況の中でユダヤ人を助ければ、ドイツに対する裏切り行為になる。杉原はビザ発行の許可を得るために日本の外務省に電報を打つが返事がない。何度も打ったが、返ってきた回答は「ノー」。
「私の一存で彼らたちを救おう。そのために処罰をうけてもそれは仕方がない。人間としての信念を貫かなければ」と決心し、腕が腫れあがり、万年筆がおれても懸命にビザを書き続けた。
「私の一存で彼らたちを救おう。そのために処罰をうけてもそれは仕方がない。人間としての信念を貫かなければ」と決心し、腕が腫れあがり、万年筆がおれても懸命にビザを書き続けた。
杉原千畝は、ユダヤ人へのビザ発給により約6千人もの尊い命をナチス・ドイツの迫害から救った外交官だが、岐阜県の田舎でごく一般の環境と家庭の中で育った普通の人で、自国の文化を愛しながらも他国の人と共感できる「国際人」としての資質を持った方だった。
現在の日本国憲法の11条で「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と述べており、人権が憲法や天皇から与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされる権利で、原則として公権力によって侵されず、人種、性、身分などの区別に関係ないと考えられる。
このような考え方は1789年のフランス人権宣言の考え方が広まった結果であり、日本においては第二次世界大戦後になってようやく普及したが、残念ながら今でも、宗教や民族の違いが発端となった紛争が各地で起こっている。
いじめがなくならないのも、いじめる側いじめられる側にいろいろな理由があるのだろうが、根本には差別することで自分が優位な地位に立つ(選民主義)ことで権力を握り何でもできると錯覚していくからなのかもしれない。
そのことに対して誰も何もいえなくなり(暴力などの弾圧で表現の自由がなくなる)、ますます権力の集中化が図られていく。どこかの国で聞いたような話だが、民主主義の考え方が広まらなければ、争いごとや差別は減らないのだろう・・。
過去の反省を踏まえつつ、人権とは民主主義とは命の尊さとは・・など考えるいい機会となった。
彼は坂本龍馬と同様、グローバルな視点で個人の目の前の利益よりも将来を見越した判断ができる人物だ。
あの時、杉原のビザで救われた方の家族の幸せそうな写真を見て、彼の判断は間違っていなかったと強く思った。
余談だが、私が外交官試験の1次試験をパスして2次試験(面接)に進出して、尊敬する人物はと聞かれ、「杉原千畝」と答えたら、その当時の外務官僚たちはどう判断しただろうか。(お恥ずかしい話、杉原と答えようか真剣に悩んでいたが、1次試験敗退のため杞憂に終わった。)
省令に背き、シベリア抑留から解放され終戦2年後に帰国したときには、外務省に戻る席がなかった。
もし私が、杉原と同じ立場に立たされたら、たとえ人権に対して強い理解があったとしても、外務省の命令に背き解雇され、家族が路頭に迷ってしまうなど失うものを考え、ビザの発行をやめていたかもしれない。
きっと彼の信念を支える奥様(幸子夫人)はじめ家族の理解もあったと思う。
杉原千畝氏の言葉から、サンデル教授の授業にある「道徳哲学の正義とは」を考えさせられた。
「私のしたことは外交官としては間違っていたかもしれないが、人間としては当然のこと。私には彼らを見殺しにすることはできなかった 」。
「私に頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない。でなければ私は神に背く」。
「私のしたことは外交官としては間違っていたかもしれないが、人間としては当然のこと。私には彼らを見殺しにすることはできなかった 」。
「私に頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない。でなければ私は神に背く」。
ホロコーストの悲劇を描いた映画は数多く存在するが、その中でも私が感動した映画を(参考)でいくつか紹介する。最近、感動から離れていると思っている方は秋の夜長に是非観賞していただきたい。
(参考)
★ホロコーストを考える映画
オードリ-は、自分の体験と近すぎて映画出演を断ったと言うエピソードもある
・ライフイズビューティフル
重くなりがちな戦争映画だが、けなげな子どもと父のやり取りを交えたコメディータッチのハートウォーミングストーリー
○人権週間とは?